「毎晩悪夢を見た」山本啓太が振り返るマンチェスター大学オンラインMPHでの社会人大学院生活

第4回目、最後のインタビューは前回に引き続き、本サイト代表の山本啓太さんにイギリス・マンチェスター大学での就学について伺いました。

マンチェスター大学オンラインMPHについては【完全解説】イギリス大学院オンラインMPHで詳しく解説しておりますので、併せてお読みください。

プロフィール

山本 啓太(やまもと けいた)

理学療法士/MPH。4年間の病院勤務の後、アルバータ大学に短期留学。その後、世界20ヶ国を放浪しながら7か国にて医療従事者に取材を行う。帰国後、ベトナム日系大学での勤務を経て、国際NGOに転職しカンボジアで駐在中。駐在員をしながらマンチェスター大学公衆衛生修士課程(オンライン)を修了。シルクロードが好き。

<最終学歴>

2022年マンチェスター大学公衆衛生学課程修了(オンライン)

<職歴>

2012年〜2016年:京都府の病院で理学療法士として勤務

2018年〜2020年:日系大学の教員としてベトナムに駐在

2020年〜:日系NGOの職員としてカンボジアに駐在

<その他の海外活動>

2016年:アルバータ大学で短期留学

2017年:20ヵ国バックパッカー

2018年:Future learningでGlobal Health and DisabilityのCertificateを取得

<関連する保有資格>

理学療法士

IELTSスコア6.5

<配偶者/子供の有無>

あり/なし

マンチェスター大学オンラインMPHとは

――山本さんが修士号を取得した大学院について教えてください。

山本:イギリスにあるマンチェスター大学のMPH Public Health (Web-based Learning)というオンラインのプログラムを修了しました。イギリスではオンラインの修士課程が一般的で、King’s College Londonやグラスゴー大学、エセックス大学などもオンラインMPHのプログラムを持っています。

履修期間は1年間のフルタイム、2年もしくは3〜5年間のパートタイムの3種類から選べて、私は2年で修了しました。100%オンラインで完結するので、一度も現地に行く必要はありませんが、イギリスでのキャンパスライフを味わってみたくて、コロナが広まる直前に10日間旅行で行きました。

――大学院に入学しようと思った理由は何ですか?

山本:理由は3つありました。1つ目はベトナムの医療教育ボランティアを通じて一対一のアプローチに限界を感じて公衆衛生学を学びたいと思ったからです。2つ目が当時ベトナムの日系大学で働いてて、修士号があれば講師くらいまでは昇進できると思ったからです。3つ目ですが、正直これが一番大きな理由なんですけど、僕は最近まで国連で働きたかったんですよ。それで国連就職の登竜門のJPO(Junior Professional Officer制度)を受けるのに修士号が必須だったので、取らなきゃというのが一番のモチベーションでしたね。

――マンチェスター大学オンラインMPHに入学するための条件を教えてもらえますか?

山本:まずは英語ですよね。IELTSだったらOverall 6.5。OA 7.0以上を条件にしている海外大学院が多い中、これはありがたかったです。僕はちょうどOA 6.5しか取れなかったので。

あと、GPA3.0以上と定められているんですけど、僕は全然達してなかったです。それまでの経歴が評価されたのか、単純に入学生の数が少なかったのかは分からないですけど、合格しましたね。

今はコロナの影響で、オンラインの学生が増えてるらしいんですよ。なので、入学の難易度はかなり高くなっていることが予想されます。

――修了の条件は?

山本:8科目をパスして修士論文を完成するっていうのが条件ですね。修論を書き上げて提出したら、担当教員ともう1人の教員が点数をつけて、それが合格点だったら修了。教員に対する修論のプレゼンなどは一切ないです。

――出願準備はいつ頃からどのような準備をしたのですか?

山本:2021年9月が入学で、準備を始めたのは2020年11月くらい。準備したのはCV(履歴書)とか職務経歴書とか諸々の書類。推薦書を2人からもらう必要があったんで、大学時代の恩師の教授と所属先の理事長に依頼しました。

それで、2020年12月にIELTSを受けました。幸い、一発でOA 6.5を取れたので余裕を持って準備を進めることができました。

2021年2月に応募書類を提出したら、次の日に合格通知が来ました。合格通知が来てから、公衆衛生に関する疫学、統計学、論文の作成方法、あと、数学についても少し勉強しました。9月になったら入学っていう流れでしたね。

――学費はどのぐらいだったんでしょうか?

山本:250万くらいでしたね。今も当時もポンドでの学費はほぼ変わってませんが、今は円安の影響で335万ぐらい。学費は働きながら支払ってましたね。奨学金を取れたら良かったのですが、準備を始めたのが遅かったので、全然間に合いませんでした。

マンチェスター大学

オンライン大学院の様子

――オンライン大学院の修学の様子を聞かせてください。

山本:オンラインなので、机に座ってパソコンとiPad開いて勉強するって感じでしたね。基本的には大学が用意してるホームページを読んで、リンク先の論文であったり、動画を見て、その週の課題をやったり、 チャット欄に学生同士の意見や質問を書き込んだりってのが一連の流れでした。

たまにZoomを使ったイベントがあったんですけど、僕は参加しなかったですね。興味深いのが、大学が用意したものを全く勉強しなくても試験さえ通ればいいんです。

――授業を受けなくても良いということですか?

山本:そうです。これに関して、イギリスの大学ってそういうスタンスなんだと分かる面白い話があります。

イギリス旅行でマンチェスター大学を満喫した後、オックスフォード大学に行ったんです。恩師の教授にオックスフォード大学の教授を紹介してもらって、彼に会いに行ったんです。そしたら「解剖学の講義と実習があるから医大生たちと一緒に勉強しなよ」って言われたので、混ぜてもらったんです。

当時、僕はベトナムで教員をやってて、ベトナムの学生たちがみんなスマホを触ったりして、自分の話をなかなか聞いてくれないことに悩んでたんです。で、オックスフォードの医大生はどんなもんなんだと思って見に行ったわけです。

そしたら、驚いたことにベトナムの学生たちとそんなに変わりなかった。みんなスマホ触るし、お菓子とか食べたり、周りとお喋りしながら授業を受ける、みたいな感じだったんです。それを別に教員たちも、注意しないんです。それがもう当たり前のように授業してるんです。

そこで、授業が終わった後に聞いてみたんですよ。「授業態度って、あんな感じで良いんですか?」って。そしたら「うん、試験さえ受かってくれたらいいよ。けど、試験は死ぬほど難しいけどね。」みたいなこと言ってて。

それを聞いて「ああ、 それでも良いんだ。大学教育の中で授業態度を細かく指導するのは違うのかな」って思ったんです。日本って、大学教育の中でも礼儀や態度を重要視しますけど、文化の違いを感じた経験でした。

オックスフォード大学の食堂

修論のテーマを決めたのは2年次前期終了

――話は変わりますが、修士論文はどのように進めたのですか?

山本:イギリスの修士課程は日本の大学院と違って、とりあえず大学院に入ってから研究したいテーマに合った担当教員を割り振られるっていう仕組みなんです。なので、入学時は「東南アジアの高齢化についての研究がしたいな」くらいにしか考えていませんでした。

2年次前期が終わったタイミングで修論のプロポーザルを提出する必要があったので、その時にテーマを決めましたね。

――どのようなテーマにしたんですか?

山本:まず研究デザインですが、当時コロナが流行してて、かつ転職活動もしていたのでシスマティックレビュー(SR)に決めました。

SRに含める論文数などを考えて、東南アジアのソーシャルキャピタルとメンタルヘルスの関連を調べようとなりました。本当は高齢者だけに焦点を当てたかったんですけど、論文数が極端に少なくなるので、全ての人口を含めた研究にしました。

社会人大学院生の日常

――山本さんはフルタイムで勤務しながら大学院生をしていたわけですが、仕事と学校との両立方法を教えてください。

山本:当時、ベトナムで週5日、8時から17時まで働いてたので、仕事が終わってからの時間と休日に勉強していました。幸い、その職場が17時に大学の校門を閉める大学だったんで、残業が全くなかったんですよ。かつ職場も歩いて20分ぐらいだったんで、時間の確保はしやすかったですね。

――1日のスケジュールを教えてもらえますか?

山本:仕事がある日は17時半に家に帰ってきて、そこからご飯食べたり、シャワーを浴びたりで 20時ぐらいになって、そこから2時間ぐらい寝て、22時から 0〜2時ぐらいまで勉強するみたいな感じでしたね。朝は7時起きです。休みの日は朝9時ぐらいに起きて、市内にランチを食べに行ったり、もしくは夜飲みに行ったりして。それ以外の時間は勉強してましたね。

――修了後も担当教員や院生との関わりはありますか?

山本:修論の担当教員とは今でもジャーナル投稿の相談をしたり、カンボジアでの研究の相談をさせてもらうような関係です。他の院生との関わりは0です。ただ別のオンライン大学院の話を聞いてると、いろんな国の学生と仲良くやってる人も聞いたりするんで。なので、ほんと人それぞれなのかなと思います。

イギリス旅行で訪れたJohn Snow Public House

オンライン大学院で楽しかったことはない

――大学院時代、楽しかったことがあったら教えてください。

山本:正直、楽しいと思ったことはないですよ。本当にしんどかったので。あえて挙げるなら、病院で理学療法士として働いてた時に研究をしたかったんですけど、何から始めたら良いのか、どんな研究デザインがあるか全然知らなかったんですよ。それが「あの時はこうしたら良かったんだ」と色々見えてきたのは嬉しかったですね。

――では大変だったことを聞かせてもらえますか?

山本:1年目が本当に大変でしたね。8教科を1年半で履修して、最後の半年が修論なんですけど、僕は最初の1年でMaxの6科目を履修したので、ヤバかったですね。特に試験中はものすごい時間、勉強してました。多い時で週に40時間とか。毎日悪夢を見て、心がすさんでいくのを感じてましたね。

1年目なので、英語を読むのも書くのもすごく時間がかかったので、ネイティブの学生よりも費やす時間がどうしても多くなってしまうんですよね。

――そうやって大変な思いをして取得した知識や学位を今後どのように活用していこうと考えていますか?

山本:具体的にはまだ決めていませんが、日本とアジアの高齢化に関わる仕事はしていきたいと考えています。僕はこれまで病院PT、大学教員、NGO職員と3つの仕事を経験してきました。

その中でも大学教員が一番しっくりきたので、また大学で学生に対して、これまで得た海外経験や大学院での知識を伝えていきたいですね。

ーー応援しています。それでは山本さんへのインタビューはこれで終了となります。合計3回、ありがとうございました。

【バックナンバー】

第1回:「日系大学から国際NGOへ」30歳で海外2ヵ国で仕事を得た山本啓太が語る海外キャリアの築き方

第2回:「夢の海外就職!しかしその現実は」山本啓太が語るベトナム日系大学でのハードすぎる教員生活

第3回:「毎晩悪夢を見た」山本啓太が振り返るマンチェスター大学オンラインMPHでの社会人大学院生活

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