記念となる第1回目のインタビューは、本サイトの代表、山本啓太さんです。山本さんは海外経験が豊富なので、海外キャリア構築、海外での仕事、大学院の3つのテーマでインタビュー記事を連載していきたいと思います。今回はキャリア構築について伺っていきます。
まずは、山本さんのプロフィールから。
きっかけはベトナムでのボランティア
ーー海外で働くまでの経緯を教えてくれますか?
山本:大学を4年で卒業して、京都の病院で理学療法士として働きました。もともとバックパッカーの旅行が好きで、毎年1〜2回くらい海外に行っていました。社会人3年目の時に、旅行じゃなくて何かしたいなと思っていた時に大学の先輩に誘われてベトナムにボランティアに行ったんですよ。
1週間有給を使って、10万円くらい自腹で。ベトナムの農村部に行って、現地の理学療法士とか保健センターのスタッフに教育するといった活動でした。そこで、いわゆる低中所得国の農村部の医療が全然進んでないことに衝撃を受けて、国際協力を仕事にしたいとなりました。
同時に、世界一周の旅をしたいなというのがあったので、いろんな国の医療従事者を取材しながら旅ができたら勉強になるし楽しいよね、ということでそんな活動をしました。旅を終えて、やっぱり海外で働きたいという思いが強くなって、5ヶ月ニートしながら転職活動した末に、ベトナムの日系大学に採用となりました。
ーー海外で働きたいと思う人は多いですが、実際に行動に移せる人は少ないです。英語の勉強など行動に移せたきっかけは何ですか?
山本:一つ目が今話したベトナムでのボランティアです。低中所得国の農村部は、こんなに医療が発達してないんだ、そこに住む人たちは、医療にかかることさえもできないんだと衝撃を受けたのがきっかけです。
そういった人たちをサポートするような制度もない。脳卒中になって片麻痺になったけど「お金がないから病院に行けない」。故障した歩行器を数百円だしたら修理できるんだけど、そういったお金もない、とか。そういった状況を見て、自分がなんとかしたいという使命感がひとつ。
二つ目が海外に住みたいっていう自分の欲がひとつ。三つ目が、日本の病院で働いてても、なかなか先が見えないっていう閉塞感。このままでいいんだろうか、と。その3つがガチっと組み合わさって、国際協力で仕事していこうと思ったんだと思います。

とりあえずの応募で採用に
ーーベトナムの日系大学の仕事はどのように見つけたんですか?
山本:求人情報を定期的にチェックしてたんですね。海外の医療の仕事ないなと思ってた時に、検索履歴でたまたま、ベトナムで病院を建設する事務スタッフの募集が引っかかったんですよ。
病院を建てた経験はないけど、とりあえず応募しました。そうすると、面接の時に「あなた、理学療法士だったらうちの大学で教えてよ」って。病院の建設はいいから、理学療法を教えてくださいと。
このことから、これから海外を目指す人にとっては、ちょっとでも自分の専門と合ってるな、とか、ちょっとイケるかもって時はどんどん応募したほうがいいなと思います。募集してないけど、連絡してみるとか。それくらいの積極性がないとなかなか仕事をゲットできないです。
ーー海外での仕事はどうやって探すのですか?
山本:ベトナムの時はJICAのパートナーとリクナビ、あとは「海外、国際協力、求人」みたいな感じでGoogleで探したりしてました。ベトナムの大学はリクナビ経由で求人企業は記載されてなかったんですけど、ベトナムで病院を建設しますみたいな、すごく特殊な案件だったので、すぐにどこの大学か分かりました。
ーー仕事を見つけるまで大変でしたか?
山本:大変でしたね。ベトナムに応募する時は、理学療法士の経験しかなかったので、武器がなかったです。英語とPTの臨床経験の二つだけで戦っている感じだったので、NGOとか企業とか応募したんですけど、10ヶ所くらい落ちました。
当時バックパッカーして日本に帰ってきた時に彼女がいたんですけど、彼女と別れたショックで、あいのりアジアンジャーニーに応募して外国に行こうかな、みたいな。実際に応募したら一次の書類審査で落ちたんですけど、そんな血迷うくらい落ち込みましたね。仕事も取れないわ、彼女と別れるわ。
ただ、カンボジアに転職するときは、2つくらいダメで、3つ目の今に決まったんですよね。ベトナムでほんといろいろ経験したので、次の転職はそんなに難しくなかったです。
駐在員の仕事を得るコツ
ーー「こうしたら海外の仕事を取りやすいよ」といったコツはありますか?
山本:僕は両方とも駐在員だったので、駐在員についてのことしか分かりませんが、駐在員ってお金かかってるので、任される仕事って多いんですよね。なので、面接の時にでも、いろんな経験してますみたいなことをアピールするのがいいと思います。
業務量的には少しだとしても、それをやったという事実があるんだったら、それをアピールした方が、面接してる側は「あ、この人できそうだな」っていう風に捉えてくれるうんだろうな。
ーー実際に海外で働いてみてどうですか?
山本:今のNGOの場合、本部にいる日本人職員の多くが海外経験があり、カンボジアの状況を知ってくれているので、かなり仕事がしやすいです。一方、ベトナムの大学は、海外経験がない人がほぼ全員だったのでしんどかったですね。いわゆるOKY(お前がここに来てやってみろ)です。
本部と現地、駐在している日本人教授と現地職員に挟まれて仕事をしていたので、着任してからしばらくはずっと早く日本に帰りたいと思っていました。この辺りの話は次の仕事編で話しますね。

海外就職は若いうちに
ーー山本さんは結婚前にベトナムに行って、今は奥様とカンボジアで生活してますけど、どのタイミングで海外挑戦すべきと思いますか?
山本:独身の時に行っちゃった方がいいと思います。結婚をすると、何をするにも2人で選択することになるので、選択肢は狭まる傾向にあると思います。人によっては海外でしばらく働いて、もう海外生活は満足だなって思う人もいるはずです。
僕はもし海外に出る前に結婚してたら、その時点で海外に行かなくていいやと思いそう。けど、しばらく経った時に「やっぱり行きたかったな」って後悔も生じてたのかな、と思います。
今まで4年くらい海外で働いてるので、けっこう満足してるっていうのもあるので、やっぱり独身の時に出てしまうほうが好き勝手できるのでいいのかな。あとやっぱり家族でってなると単純に行ける国が狭まってしまいますしね。
ーー実際に海外で働くという夢を実現されてどう感じていますか?
山本:確かに他の人達から見ると、海外で働くという夢を達成したと思われると思うんですけど、自分の中で全部満足してる訳でもなくて、それぞれの職場でそれぞれの葛藤というのがあって。自分のやっていることが本当に意味あるのかな、って悩みは病院で働いている時も、大学で働いている時も、今もあります。
今のNGOの仕事で自分が本当にやりたいこと(理学療法や公衆衛生)が出来ているかというと、正直あんまりです。
ーーNGOでは何をされてるんですか?
山本:障害児の教育支援です。事業の一部で現地の保健センター職員に理学療法を教えましょうっていうところは僕の専門性とマッチしているんですけど、8〜9割が教育に関することやってるんで。あとお金の計算をしたり、書類を作成したりといった事務作業がめちゃくちゃ多いです。
海外で得た様々な経験を活かして
ーー海外でキャリアを構築するメリットは何だと思いますか?
山本:カンボジアは職員の人数が少なく、所長の下に僕なので、裁量権の大きい仕事ができているのはすごく良い経験だと思います。また、文化も母国語も違う環境で、現地職員や地域の人たちと一緒に事業を行えていることは価値があると感じます。
ーーこのような経験を今後どのように活かしていきたいですか?
山本:正直まだ決まってないです。ただ、PTという医療従事者、患者さんと1:1の立場に戻るんじゃなく、公衆衛生的な立場で仕事がしたいです。
それが駐在員なのか、研究者としてなのか、公務員もしくは起業家なのかはわかんないですけど、カンボジアでやってきたようなスタッフをマネジメントしたり、研修をプログラムしたり、現地の市役所とやり取りをして事業を進めたりといった経験は、今後もどんな仕事に就いたとしても役立つと思っています。
また、もう一つの活かし方が、この「プラヘル」というメディアを作って、自分の経験や、もっとこういったサービスがあったら良かったな、というものを提供していきたい。今後海外で働きたいという医療従事者をサポートするようなサービスを作っていきます。
ーー最後にメッセージはお願いします。
山本:駐在員になるには、今の職場で研修を企画するとか、地域に出て健康教室をやってみるだとか、研究をやってみるとか、色々できることはあると思います。その経験が、後の仕事獲得や職場での活躍に影響してくるはずです。英語は必須ですが、これはもう根性ですね。
【バックナンバー】
第1回:「日系大学から国際NGOへ」30歳で海外2ヵ国で仕事を得た山本啓太が語る海外キャリアの築き方
第2回:「夢の海外就職!しかしその現実は」山本啓太が語るベトナム日系大学でのハードすぎる教員生活
第3回:「毎晩悪夢を見た」山本啓太が振り返るマンチェスター大学オンラインMPHでの社会人大学院生活

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