近年、海外を目指す理学療法士・作業療法士(PT/OT)が増えています。
海外で働くことには夢があります。当然、働く国や職場によって異なりますが、収入が増えたり、社会的地位が向上したり、休日が多い仕事に就けたりと様々な魅力があります。
しかし、英語の苦手な日本人にとって、海外で働くことはそう簡単ではありません。実際に「海外で働きたい」と思っていても行動に移せる人は少なく、さらに仕事を得られるのはほんの僅かです。
この記事では、PT/OTが海外で働く際の選択肢となるJICA海外協力隊、国際機関、JICA、国際NGO、日系企業について解説しています。
筆者の経験上、国際協力団体と日系企業が中心となりますが、ご了承ください。
この記事を読んで、筆者にキャリアカウンセリングを依頼したい方はメンター紹介のページにアクセスしてください。
1. JICA海外協力隊
① JICA海外協力隊
海外を目指す全てのPT/OTにオススメしたいのがJICA海外協力隊(以下JOCV)です。
JOCVについての説明はこちらです。
開発途上国の国づくりに貢献できる人材を現地へ派遣、帰国後もグローバル人材としての活躍が期待されています。JICA(独立行政法人国際協力機構)が派遣する青年海外協力隊/シニア海外協力隊は、開発途上国で現地の人々と共に生活し、同じ目線で途上国の課題解決に貢献する活動を行っています。帰国後は、日本をはじめ様々な国や分野で、経験を生かした貢献が期待されています。
JICA海外協力隊
JOCVでは、比較的安全な低中所得国に派遣され、生活費や活動終了後の活動資金も受け取ることができ、さらに病気や怪我をした際のサポートも万全であることから国際協力の登竜門と呼ばれています。
PT/OTの募集は、コロナ前の2019年春にはPTが35件、OTが41件の要請がありましたが、新型コロナウイルスの影響で一時は要請が減っていましたが、2022年春にはPT22件、OT39件とコロナ前に近い数字まで戻っています。
またPT/OTは他の職種に比べ、倍率が低い(※)ため、健康面と経験年数さえクリアしていれば、高い確率で合格できると言われています。
※2017年秋募集の場合、青少年活動6.23倍に対し、PT1.45倍
② JICA海外協力隊に参加するべき4つの理由
語学力の向上
JOCVに参加すべき一つ目の理由は語学力の向上です。海外を目指すほぼ全ての理学療法士にとって最大のネックとなるのが英語です。しかし、JOCVに参加することでこの問題を解決できる可能性が高まります。JOCVでは派遣前訓練という研修プログラムがあります。
JICA海外協力隊として安全に、有意義に生活や活動ができるよう、協力隊員として必要な姿勢や態度、言語や異文化理解など必要最低限の知識や能力・適性を養うこと、また、予防接種や渡航手続きを行うことを目的として、約70日間の合宿制で実施しています。
派遣前訓練ってなに?
この研修の大部分を占めるのが語学研修で、派遣される国で必要な言語を集中的に勉強します。当然、派遣される国によって学ぶ言語は異なりますが、フィリピンやマーシャル諸島、ベリーズといった英語圏の国に派遣される場合、プロの講師から70日間みっちりと英語の授業を受けることができます。
さらに派遣国で2年間、理学療法士として英語を使って働くため、医療英語までかなりのレベルに到達することが予想されます。仮に派遣国が英語圏でなかったとしても、第二外国語を学ぶことでその後のキャリアは大幅に広がるはずです。
日本で貯金して語学留学するよりもJOCVに参加した方が格段に語学は上達しますので、これだけでもJOCVに参加するメリットはあると言えます。
貯金ができる
二つ目の理由は貯金ができることです。JOCVの経験者のブログを見ていると、月3〜8万円の生活費が受け取れるそうです。それに加えて住宅費も100%支給されます。
それだけでなく、帰国後に困らないように就職準備金として、任期終了後には約200万円が日本の口座に積み立てられています。(実際には交際費や一時帰国費に使い、50万円程度しか残らないという話も聞きます)
さらに活動終了後に進学する場合、教育訓練手当として最大20万円の補助を受けることができます。
「帰国隊員教育訓練手当」は、帰国隊員の帰国後の進路開拓に役立つ技術・技能の修得または免許・資格の取得につながる教育訓練に対して、JICAが支援する制度です。
教育訓練手当
つまりJOCVは、語学が上達するだけでなく、最大200万円の貯金ができ、進学する場合20万円の補助金が受けられるという金銭面でもメリットのある制度なのです。
海外経験が得られる
三つ目の理由は、海外経験が得られることです。
国際協力の仕事(国際機関 / JICA / 国際NGO)や日系・外資系企業に応募する際、最低2年間の海外就労経験を求められることがあります。JOCVは基本的に2年間の活動ですので、自動的にその条件をクリアすることができます。
また国際協力の仕事の場合、特に定中所得国での現場経験を重視するため、JOCVでの2年間は大きなアピールポイントとなります。
人脈が広がる
四つ目の理由は人脈が広がることです。筆者はベトナム勤務時代、たくさんのJOCVで療法士の知り合いができましたが、彼らの多くが現地で知り合った経営者や知り合いの紹介で仕事を得ていました。
ベトナムは日系企業が多く進出しているので少し特別な環境かもしれませんが、その国で得た人脈を活かして仕事を得られるチャンスは十分にあると言えます。
③ JICA海外協力隊に応募する際の注意点
応募する際に注意したい点は英語圏の国を選ぶことです。逆に英語がある程度話せる人は第二外国語として役立てやすいフランス語やスペイン語圏の国を選ぶとその後のキャリアに活かしやすいと思われます。
言語に関して一つ注意すべき点は、JOCVの案件紹介のページに明記されている生活言語を確認することです。活動言語には英語と書かれていても国によっては、生活言語値して現地語を学ぶ必要がある場合があります。
例えば、フィリピンではタガログ語、マラウイではチェワ語を英語に加えて学ぶ必要があるのです。このような場合、英語を話す機会はほとんどないと言われています。
そのため、活動言語だけでなく生活言語も合わせて確認して下さい。
④ JICA海外協力隊からのキャリアステップ
ここまでJOCVのメリットを述べてきましたが、現実にはJOCV経験者のほとんどが帰国後、国際協力の仕事に就いていないと言われています。この傾向はライセンスを持つ看護師や理学療法士に顕著だそうです。
つまり「とりあえずJOCVに行けば海外で働けるだろう」と安易に考えるのは禁物だということです。JOCV終了後も現地で仕事に就きたい場合、先輩隊員や現地駐在員たちと繋がり、情報収拾を着任後すぐに始めるべきです。
さらに国際協力の場合、給与の良い国際機関やJICAに就職するには修士号が必要なことが多いです。そのため、大学院進学のための資金を派遣前から準備しておくことも重要です。
したがって、JOCVに応募する前から①進路の(大まかな)決定、②英語の勉強、③貯金の3つを準備しておくことを忘れないでください。
まとめ
繰り返しになりますが、JOCVに参加したからといって海外への道が開かれるわけではありません。しかし、JOCVで得た言語や経験、人脈はその後の海外挑戦に繋げられるはずです。本気で海外を目指す人には、まずはJOCVに応募することを強くオススメします。
2. 国際機関
将来、国際機関で働きたいという夢を持つPT/OTもいると思います。国際機関についての説明をする前に、PT/OTができる国際協力を緊急支援と開発援助に分けて整理しようと思います。
① PT/OTができる緊急援助と開発援助
緊急支援
緊急援助の場合、戦争や紛争が起きている国や地域、もしくは自然災害の被災地が活動の場となります。
PT/OTの主な役割は、怪我や病気をした人のリハビリテーションです。緊急援助の仕事では、戦争や紛争、災害が生じた場所で働くため、骨折や切断、火傷などのリハビリテーションやメンタルケアに関する知識技術が要求されます。
勤務先としては、ICRC(赤十字国際委員会)や世界的に有名な国際NGOであるMSF(国境なき医師団)、世界の医療団などがごく稀にPTを募集していることがあります。
この分野で最も有名なのがICRCのアルベルト・カイロ氏です。カイロ氏は、2010年にノーベル平和賞にノミネートされたアフガニスタンで活動するPTです。
TED talksの動画を見る限り、緊急援助と開発援助のちょうど中間のようなイメージですが、胸が熱くなるプレゼンテーションなので、ぜひ観てみてください。
開発援助
開発援助の場合、比較的安定した国や地域での技術移転が目的となります。
PT/OTの役割は、保健医療システムの強化や生活習慣病対策、現地のPT/OTの教育が主となります。特に現在、アジアやアフリカといった開発途上国でも先進国と同様に高齢化が進行しており、非感染性疾患による死亡率が急激に増加しているため、PT/OTへの期待は大きいと言えます。
開発援助分野での働き方としては、国際機関の職員やJICA専門家として現地政府と協働して非感染性疾患の対策に関する政策を策定したり、国際NGOの職員として現地のPT/OTに教育をしたり、農村部に住む障害者の支援に関わったりと多岐にわたります。
② PT/OTが目指す国際機関
それでは国際機関についての解説に戻ります。ここでは国際連合、専門機関などを含めて国際機関としています。国際機関に該当する機関は以下の通りです。
国際連合(UN)
国連総会により設立された国連の下部機関
国連開発計画(UNDP),国連環境計画(UNEP),国連プロジェクトサービス機関(UNOPS),国連人口基金(UNFPA),国連難民高等弁務官事務所(UNHCR),国連大学(UNU),国連児童基金(UNICEF),国連女性機関(UN Women),世界食糧計画(WFP)など専門機関
国際労働機関(ILO),国連食糧農業機関(FAO),国連教育科学文化機関(UNESCO),国連工業開発機関(UNIDO),世界保健機関(WHO),国際民間航空機関(ICAO),国際海事機関(IMO),国際電気通信連合(ITU),万国郵便連合(UPU),世界気象機関(WMO),世界知的所有権機関(WIPO),国際農業開発基金(IFAD)などその他の国際機関
国際機関一覧
国際原子力機関(IAEA),世界貿易機関(WTO),経済協力開発機構(OWECD)など
この中でもPT/OTの専門性を活かせる機関は、世界保健機関(WHO)と国際連合児童基金(UNICEF)の2つでしょう。(実際には世界銀行、国際連合パレスチナ難民救済事業機関などにも医療従事者はいます)
PT/OTの専門性を活かせるポジションとしては、WHOには非感染性疾患やメンタルヘルス対策、UNICEFには子供の健康に関する仕事があります。
③ 国際機関で働くための条件とJPO派遣制度
国際機関で働くための条件
国際機関で働くには、一般的に修士号、英語力、職歴の3つが必要となります。
国際機関で働くための方法は、①空席公告、②JPO派遣制度、③YPPの3つがあります。このうち空席公告とYPPは、世界中のエリートたちと数少ないポストを争うことになり、倍率は数十倍〜数百倍と言われてます。
そのため、この記事では日本人のみが応募でき、最も採用される可能性が高いJPO(Junior Professional Officer)派遣制度について解説していきます。
JPO派遣制度
外務省によるJPOの説明がこちらです。
外務省では、将来的に国際機関で正規職員として勤務することを志望する若手日本人を対象に、日本政府が派遣にかかる経費を負担して一定期間(原則2年間)各国際機関で職員として勤務していただくことにより、国際機関の正規職員となるために必要な知識・経験を積む機会を提供し、ひいては派遣期間終了後も引き続き正規職員として派遣先機関や他の国際機関に採用されることを目的として、JPO派遣制度を実施しております。
外務省 国際機関人事センター
JPOとは簡単にいうと、国際機関で働く日本人を増やすために、本来国際機関が支払うべき給与等を外務省が負担し、派遣期間内に正職員として採用させることを目的とした制度です。
応募条件は、①35歳以下、②修士号取得者、③2年以上の職歴の3つです。
2019年度試験の倍率は52/327人で6.2倍、合格者の平均年齢は31.4歳、また合格者の英語の平均スコアは、TOEFL105.4点、IELTS OA 7.4でした。(参考:国際機関で働こう!)
前述したように空席公告、YPPの倍率は数十倍〜数百倍、さらに競合するのは英語ネイティブたちということを考えるとJPO派遣制度を利用した方が格段に可能性が高いことがわかります。
しかし、JPO派遣=就職ではありません。派遣される2年間のうちに実力を認められ、次のポジションを勝ち取る必要があります。つまり、ポジションが得られなければ無職という非常に厳しい世界です。
国際機関職員の給料
国際機関職員の給与に関しては、勤務地によって大きく異なりますが、エントリーレベルで482〜1055万円と設定されています。(参考:国連職員の給料 管理職・専門職・上級職編)
JPO制度で派遣される期間も正職員(P2レベル)と同じ給料を受けとることができます。
④ 国際機関を目指す上での注意点
現場との遠さ
国際機関は世界や国の政策を作る組織です。つまり、病院や施設で働く理学療法士のように患者一人一人と向き合いたい、もしくは特定の地域に密着して活動したいと考えている人にとっては不向きです。(UNICEFは比較的現場に出ることがあるようです)
国際機関には、Headquarter(本部)、Regional Office(地域オフィス)、Country Office(国オフィス)と3つのレベルがあります。Country Officeだと現地の医療従事者や患者と接する機会もありますが、Headquarterとなるとかなり難しいでしょう。
職の不安定さ
国際機関で働くと一般的に数ヶ月〜数年ごとに契約を繰り返すことになります。そのため短期間で職場を転々としたり、時には職を失うこともあるということです。
近年ではどこの国際機関も資金繰りに窮しており、また高学歴で優秀な現地職員が増えていることから、日本人のような国際職員が仕事を得ることが難しくなっているようです。
また、日本のように年数が経てば昇進ということはありません。出世を望む場合、より高いポジションに応募し、国際機関の内部にいる職員や外部からの応募者とポジションの取り合いになります。
そのため、終身雇用が当たり前の日本人には非常にストレスで自ら国際機関を去る人も多いと聞きます。
まとめ
JPO派遣制度は35歳までが対象であるため、3つの条件(修士号、IELTS OA 7.0、2年間の職歴)をなるべく早く計画的に揃える必要があります。
私が今から国連就職を目指すならば、学生時代から英語の勉強を始め、理学療法士として2〜3年医療機関で働きながら200万円ほど貯金します。その後はJOCVで英語が使える国へ行き、任期終了後はイギリスで1年間で修士号を取得し、JPOに応募します。
国連で働きたい人は、これらのブログ(Shota’s Blog、敦賀一平オフィシャルサイト、どうせなら希望たっぷりに生きよかな)でより詳細な情報が得られますのでアクセスしてみてください。
3. JICA
日本の政府開発援助(ODA)を行う実施機関として、開発途上国への国際協力を行うのが独立行政法人国際協力機構(JICA)です。JICAで働くには、以下の選択肢があります。
JICA職員(社会人採用・期限付き職員採用)・・・即戦力が雇われる。
国際協力をやってみませんか
JICA専門家(技術協力専門家)
国際協力専門員・・・普段はJICA研究所、国外ではJICA専門家。プロ中のプロ
企画調査員・・・青年海外協力隊後、途上国での案件発掘など。大学院修士必要なし。現場経験だけあればいい。
国際協力推進員・・・都道府県、市町村に勤務勤務。2〜3年で任期終了。
青年海外協力隊の研修施設・・・福島、長野。これも有期の雇用。
この中で理学療法士の専門性をダイレクトに活かせるのはJICA専門家です。ここでは、まずJICA専門家へのキャリアアップのためのジュニア専門員制度について説明し、その後にJICA専門家について解説していきます。
① ジュニア専門員制度
ジュニア専門員制度についてはJICAのホームページに説明が記載されています。
ジュニア専門員制度は、開発途上国・地域等における開発援助の専門知識と一定の活動経験を有し、将来にわたり国際協力業務に従事することを志望する若手人材を対象に、主に国内においてJICA事業を実地に研修する機会を提供するものです。それにより、国際協力に関する実践的な計画策定、運営管理といった協力手法等についての能力の向上を図り、JICA事業実施においてニーズがありながら人材が不足する分野の人材を養成することを目的とします。研修は、JICA本部における国内研修を中心に行い、期間は最長1年6ヵ月とします。なお、研修終了後は、長期の専門家等として海外へ派遣されることを原則とします。
JICA
要約すると、最長1年6ヶ月の研修を受けることができ、その後はJICA専門家として勤務することができるのがジュニア専門員制度です。
ジュニア専門員への応募条件は、①25歳以上37歳以下、②大卒程度の学力、③語学力、④国際協力の経験です。(参考:仕事・職業解説ハロージョブ)
JOCVに参加することで上記の条件は全てクリアできますが、修士号を取得する、もしくは第二外国語をマスターすることで差別化が図れ、採用される可能性は高くなると思われます。特にJICAはアフリカの開発に力を入れているため、フランス語を勉強しておくと有利になると言われています。
② JICA専門家
JICA専門家について以下のとおりです。
JICAの技術協力の現場で活動しているのがJICA専門家と呼ばれる方たちです。 彼らは、それぞれ専門知識や技術を持ったスペシャリスト。途上国からの要請や政府間の国際約束に基づいて、政府機関、研究機関、教育機関などに派遣されています。活動分野は、教育・保健・医療、農業、環境など多岐にわたります。
多くの専門家は「技術移転型」の支援を行っています。これは、政府や関係機関の職員に、技術や知識を伝えたり、制度や組織の改善を提案したりすること。例えば、病院では医師や看護師の指導に当たるスタッフに指導法や応用技術を教え、また、ある政府機関では高官に政策立案や行政マネジメントに関するアドバイスを行ったりします。
JICA専門家って どんな仕事をしているの?
PT/OTの専門性を活かせる分野としては、近年案件が増加している非感染性疾患対策や保健システム強化があります。2019年と少し古いですが、パレスチナ自治区のガザ地区にて現地PTの技術向上のための研修を行うためにPTのJICA専門家の募集がありました。(参考:PARTNER)
契約期間は、年度ごとの契約で最長5年間です。年棒に関して、国際協力専門員(JICA専門員とは異なる)の場合、職務経験20年で800万円、30年で1000万円と設定されています。(参考:JICAについて)
ここまでジュニア専門員とJICA専門家についての説明してきましたが、実際にはPT/OTの専門性が活かせる案件はかなり少ないため、選考の段階で篩にかけられるのではないかという疑念はありますが、一つの選択肢であることに変わりはないと思います。
まとめ
JICA専門家は、PT/OTとしての専門性が発揮できて給与も良い魅力的な仕事の一つです。一方で案件が少なかったり、仕事を得られたとしても契約期間が短いといった問題もあります。そう考えると、大学教員や臨床をしながら案件が出れば応募するといったやり方が現実的かもしれません。
4. 国際NGOで働く
PT/OTが海外就職する際の選択肢の一つとして国際NGOがあります。
(NGOとは)貧困、飢餓、環境など、世界的な問題に対して、政府や国際機関とは違う”民間”の立場から、国境や民族、宗教の壁を越え、利益を目的とせずにこれらの問題に取り組む団体のことです。
国際協力NGOセンター JANIC
国際NGOは国際機関やJICA、日系企業と比べて、低中所得国で困難を抱えている人たちに寄り添った活動ができるという特徴があります。また別の特徴として、新卒での入職はほぼなく、他の企業やJOCVなどで経験を積んでから転職することがほとんどです。
① PT/OTが働く国際NGO
PT/OTの専門性が活かせる団体は多くありません。筆者が探した限り、リハビリテーションに関連した事業を行っているのは難民を助ける会 AAR Japanとピースウィンズ・ジャパン2団体のみでした。
特にピースウィンズ・ジャパンは国際NGOには珍しい非感染性疾患の予防に関する事業をパラオで実施しています。PT/OTとしての経験をここまで活かせる団体は他にないと思います。
② 国際NGOの厳しい給与事情
一般的に国際NGOは給与が低いと言われています。JANICは、2017年の民間企業の平均給与は487万円であったのに対し、NGOの有給職員の平均給与は341万円であったと報告しています。(参考:NGOで働く―52団体・659名のデータから実態を見る)
PTの平均給与が418.9万円なので国際NGOに転職することで年収が大幅に下がる可能性があります。(参考:転職Hacks)
まとめ
PT/OTが専門性を活かせる国際NGOは多くありません。また、国際NGOで働きながら自身のスキルに見合った給料を得ることは難しいことが多いです。
一方で、低中所得国の現場で困っている人たちに寄り添う活動ができるといった国際NGOならではの魅力があるのも事実です。
英語で仕事ができて海外駐在員であるにも関わらず、給与が低いといった現実を受け入れられるなら、国際NGOも一つの選択肢として考えてみてはいかがでしょうか。
5. 日系企業
近年、日本国内の人口減少や市場の縮小を考慮し、東南アジアを始めとした海外に進出する企業が増えています。PT/OTの求人募集はまだまだ少ないですが、ここで紹介する企業の動向をフォローしておくとチャンスが生まれるかもしれません。
北原病院グループ
海外進出している日本の病院と言えば北原病院でしょう。北原病院グループは「日本の病院まるごと輸出」を合言葉に2016年、カンボジアの首都プノンペンにサンライズホスピタル病院を設立しました。また、現在の状況は不明ですが、2017年にはベトナム、2018年にはラオスへと進出を開始しています。(参考:北原病院グループ2022年海外事業Web採用説明会開催!)
サンライズジャパン病院の駐在員の方に聞いた話では、PT/OTの駐在員は2名で任期は数年と定められているとのことでした。転職してすぐに駐在できるかは分からないそうですが、PT/OTとして病院・企業に属しながら海外に行きたい方には、ファーストチョイスになるかと思います。
ポラリス
ポラリスは兵庫県宝塚市に本社に持ち、全国70ヶ所近くのデイサービスを展開する企業です。2022年6月、現地企業と業務提携し、ベトナムの首都ハノイに国内初の自立支援型介護施設を開設しました。(参考:ポラリス、自立支援を世界へ広げる第一歩、ベトナム初事業所開設)
現在、PT/OTの駐在員がいるのかは不明ですが、今後フランチャイズ展開を目指していることからもPT/OTの求人が増える可能性があるので要チェックです。
人間総合科学大学
埼玉県にある人間総合科学大学は、2017年にベトナムの首都ハノイ近郊にTokyo Human Health Sciences University Vietnamを設立しました。この大学ではベトナム人学生が日本の医療を学んでおり、PT学科もあります。
また、2022年には大学の敷地内に建設されたKUSUMI HOSPITALが開院予定です。診療科など詳細は不明ですが、リハビリテーション科があるのなら選択肢の一つとなるでしょう。
インスタリム
「必要とするすべての人が、義肢装具を手に入れられる世界をつくる」を実現するためにフィリピンとインドで事業を行っているのがインスタリムです。
求人情報を見るとポジションによっては、年に1〜2回以上、1〜2か月以上の海外出張があるようです。主な拠点は日本に置きたいけど、海外でも仕事がしたい人にはぴったりの企業かもしれません。
社会医療法人北斗
社会医療法人北斗は2018年、ロシアのウラジオストクにリハビリ施設を開院しました。日本人は常駐しておらず、出張ベースで現地のリハビリテーション医の指導にあたっているようです。(参考:日本のリハビリ施設開院 ウラジオストク、経済協力の一環)
2022年のロシアのウクライナ侵攻に伴い、事業がどうなっているかは不明ですが、将来平和が訪れた際には選択肢の一つになれば良いなと思っています。
まとめ
医療・介護のインフラが整っていない国で仕事を展開していくことは大きな魅力だと言えます。また物価が日本より少し低い東南アジアで日本と同額の給料をもらいながら生活できるのも一つの魅力です。
海外関連の案件は求人サイトで募集しないことがあります。そのため、職歴や英語力に自信がある方は直接問い合わせてみるのも一つの手段です。
最後に
海外で働くことを夢見る人はたくさんいます。しかし、そこに至るまでの道程は辛いことばかりです。思うように上達しない英語、貯まらない貯金、数少ない求人など諦める理由は挙げだしたらキリがありません。
筆者もこれまで何度も諦めようと思いました。しかし、4年間、勉強と情報収集を続けることで何とか海外での仕事に就くことができました。
あなたも諦めずに努力を続ければきっと夢を叶えられるはずです。そんなあなたをプラヘルはサポートしていきます。
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